Mujin Story:創業からの歩み (Episode 1〜6 全編)
ガレージから始まった2人の挑戦が、世界初・完全自動倉庫を実現するまで。創業、技術開発、物流への大転換、そしてグローバル展開に至るMujinの激動の軌跡を全6話で振り返る。
2011年の創業から、Mujinは一貫して「産業用ロボットの知能化」という未踏の領域で技術革新を起こし続けてきました。
従来は専門家が手作業で教え込む(ティーチング)必要があり、導入に1年以上かかっていた産業用ロボット。Mujinは、自律的に見て、考えて、動く「ロボットの脳(知能)」を開発することで、ロボット導入期間を劇的に短縮し、これまで不可能とされていた複雑な工程の自動化を次々と現実のものにしてきました。
日本発のディープテック・ベンチャーでありながら、社員の半分以上が世界20カ国以上から集まった外国籍のトップエンジニア。そんな異色のスタートアップは、いかにして誕生し、世界の物流と製造現場を変革するグローバル企業へと成長していったのでしょうか?
創業から現在に至るMujinの激動の歩みを、全6話のストーリーでお届けします。
📖 Mujin Story エピソード目次
Episode 1: 創業者2人の出会い (2009-2011)
天才ロボット研究者Rosenと熱血営業エース滝野の運命の出会い。
Episode 2: 本格始動までの道のり (2011-2012)
絶体絶命のデモ、初顧客キヤノン様、UTECからのシリーズA調達。
Episode 3: ドリームチーム結集 (2012-2014)
MITからの参画、41㎡の小石川ガレージ、主力製品の原型誕生。
Episode 4: 物流への大転換 (2014-2016)
アスクル様との出会い、世界初の物流ピッキングロボット実用化。
Episode 5: 世界初の完全自動倉庫 (2017-2018)
JD.comとの40,000㎡無人倉庫プロジェクトと国内外での数々の受賞。
Episode 6: グローバル展開とMBO (2018-2019)
PALTAC、ファーストリテイリング提携、MBOによる経営独立。
Episode 1: 創業者 RosenとIsseiの出会い (2009-2011)


正反対の2人が交わった日
Mujin CTOのDr. Rosen Diankovは、カーネギーメロン大学(CMU)で博士号を取得し、ロボット自律動作計画の世界的権威として知られる天才研究者。 一方、CEOの滝野一征(Issei)は、米国の大学を卒業後、ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイ傘下のイスラエル切削工具メーカー「ISCAR」でトップセールスとして日本の製造現場を駆け回っていたビジネスパーソンでした。
2人の出会いは2009年、東京で開催された国際ロボット展(iREX)。ROSを開発したWillow Garageのブースに立っていたRosenと、バイリンガル営業として手伝いに来ていた滝野が隣り合わせになったのがすべての始まりでした。 滝野の鋭い顧客洞察力とビジネス感覚に衝撃を受けたRosenは、展示会が終わるやいなや「一緒に起業しよう!」と熱烈にアプローチを開始します。
「この男となら、地獄の底まで行ける」
当時、安定した高給取りだった滝野は一度は断ったものの、Rosenの情熱は衰えませんでした。アメリカへ帰国後も連絡を取り続け、ある日突然、大阪にある滝野の実家に単身現れたのです。
💬 滝野(Issei): 「スタートアップが成功するかどうかなんて誰にも分からない。でも、これだけの凄まじい執念と情熱を持った人間となら、途中でどれだけ巨大な壁にぶつかっても起き上がってやり抜くことができる。この男となら地獄の底まで行く覚悟ができました。」
2人は手持ち資金100万円を持ち寄り、2011年7月に株式会社MUJINを設立しました。
Episode 2: 本格始動までの道のり (2011-2012)


「20分だけ時間を稼いでくれ!」デンソーウェーブでの奇跡
創業直後、大手ロボットメーカーのデンソーウェーブ様の前でデモを行う絶好のチャンスが訪れました。しかし、本番当日になってもデモが動かない。2週間の日程延期をお願いしたものの、再設定された期日当日、会場へ向かう車内でも依然としてプログラムはエラーを吐き続けていました。滝野が運転し、助手席でRosenが猛烈な勢いでキーボードを叩きます。
「20分でいい、会話をつないで時間稼ぎをしてくれ!」と懇願するRosen。 会場に到着し、滝野は汗だくになりながらMujinのビジョンを熱弁して時間を引き延ばしました。会場がざわつき始め、いよいよ言い訳も尽き「もうこれ以上は延ばせない、謝罪しよう」と覚悟を決めたその瞬間、Rosenが開始ボタンを押しました。
奇跡的にデモは滑らかに動き出し、プレゼンは大成功を収めたのです。初のお客さまキヤノン様、そしてUTECからのシリーズA調達
2011年末の国際ロボット展で机1台の小さなブースを出展したMujin。手刺繍で「MUJIN」と入れた白シャツを着て臨んだブースで、最初の顧客となるキヤノン様との運命的な出会いを果たし、ロボット軌道最適化ソフトウェアの受注に成功しました。
さらに2012年8月、東京大学エッジキャピタル(UTEC)からのスピード出資を取り付け、総額7,500万円のシリーズA資金調達を完了。Mujinはいよいよ本格的な急成長軌道へと舵を切りました。
Episode 3: 世界から集まったドリームチームとMujinプロダクトの誕生 (2012-2014)



MITから3人目のメンバーHuanが参画
2012年夏、MITの大学院で研究していた中国出身のHuan Liu(現・Mujin China代表)が参画。Rosenのアパートで一晩中ロボティクス実用化の夢を語り合い、「これこそが自分の人生を懸ける仕事だ」と確信したHuanは、わずか1ヶ月後に仕事と大学院を退職し日本へ移住しました。
41㎡のガレージと手作りファミリーカルチャー
文京区小石川に構えた最初のオフィスは、わずか41平米のガレージ。 床にアームロボットが鎮座すると奥の席への通路が塞がれるため、一度オフィスの外に出て反対側の扉から回り込んで話しかけるような環境でした。
見知らぬ異国・日本へ飛び込んできた海外エンジニアたちの生活を支えるため、CEOの滝野は毎日手作りの温かい食事を振る舞い、ビザ取得から銀行口座開設、住居探しまで奔走しました。この時に育まれた強い絆が、現在の「Mujin Family」カルチャーの礎です。
「Mujin Hero」ポルトガルからの緊急フライト
2014年の設計・製造ソリューション展(DMS)。開幕2日前、ボルトピッキングのデモ機がビジョンの不具合でどうしても動かない事態が発生。Rosenはカーネギーメロン大時代の研究仲間で、ポルトガルにいたエンジニアに電話をかけました。
電話を受けた彼はその場でリスボン空港へ向かい、開催初日の早朝に羽田へ到着。開場までのわずか2時間で見事にバグを特定・修正し、デモを大成功へと導きました。彼は社内で「Mujin Hero」と称えられ、後に正式メンバーとしてMujinに加わることになります。
Episode 4: 製造から物流に踏み出したきっかけ (2014-2016)


初の主力製品「Pick Worker」とロボット大賞受賞
2014年、ジャフコ(JAFCO)およびUTECから総額6億円のシリーズB資金調達を実施。 そして2015年1月、Mujin初の量産プラットフォームとなる知能ロボットコントローラ「Pick Worker」を市場へ投入しました。事前ティーチングを一切必要とせず、ロボットが自律的に周囲を認識して障害物を避けながらピッキングするこの技術は、2016年に「第7回 ロボット大賞 経済産業大臣賞」を受賞。わずか30名足らずのベンチャーが最高峰の栄誉を手にしたことで、業界に激震が走りました。
MUJIN ピックワーカー - 次世代バラ積みピッキング知能システム(2015年)
アスクル様からの1通のメール:物流革命の幕開け
製造業での実績を重ねていたある日、オフィス通販大手のアスクル様から1通の問い合わせメールが届きました。 「物流倉庫で、ティーチレスのピッキングロボットを実現できないか」。
当時、アスクル様は大学教授や国内外のロボットメーカー100社以上を回ったものの、すべて「物流の多品種不定形ピッキングなど絶対に不可能だ」と断られ続けていました。最後の望みをかけ、「産業用ロボット ティーチレス」でWeb検索して一番上に現れたのがMujinだったのです。
連絡を受けたMujinは、即座に「実際の現場を見せてください」と提案。現場主義を重んじる姿勢にアスクル様も共鳴し、2015年12月に正式な業務提携を締結。2016年末、世界初となるティーチレス物流ピースピッキングロボットの実稼働に成功しました。
アスクル様 Value Center 関西で稼働するピースピッキングロボット
Episode 5: 世界初の完全自動倉庫の実現と複数の受賞 (2017-2018)



スカイツリーのふもと、押上オフィスへ
2017年5月、社員数は40名に達し、墨田区押上の元大型倉庫へ3度目の移転を実施。業務用大型エレベーターを備えた広大なフロアを手に入れ、重厚な実機ロボットセルを何台も並べて検証できるようになりました。
この押上時代に、現在の名物福利厚生である専属シェフによるフリーランチビュッフェや、本格コーヒーバーが本格的にスタートしました。
JD.com(京東)プロジェクト:上海で世界初の完全自動倉庫を稼働
アスクル様での成功は世界へ轟き、中国EC第2位の巨人「JD.com(京東集団)」からオファーが舞い込みました。 上海に新設する延床面積40,000㎡の巨大物流センター全体を、完全無人で自動化するという前代未聞のプロジェクトです。
通常500名の作業員を要する大規模倉庫において、入荷から仕分け、梱包、搬送までの全工程をMujinコントローラ搭載ロボット20台が統括。2018年2月、1日20万個を処理する「世界初の完全自動倉庫」が完成し、世界中のメディアにトップニュースとして報じられました。
中国・上海で稼働した世界初の完全自動倉庫(JD.com × Mujin)
この快挙により、JEITAベンチャー賞、企業家賞、Japan Venture Award(中小企業庁長官賞)、日米イノベーションアワードなど、名だたるビジネスアワードを総なめにしました。
Episode 6: 広がるソリューション領域とパートナーシップ (2018-2019)



デパレタイズ・パレタイズへの領域拡大:PALTAC様での挑戦
ピースピッキングの成功に続き、Mujinは重量段ボールの積み下ろし(デパレタイズ)と積み付け(パレタイズ)の知能化に着手。 2018年夏、日用品・化粧品卸大手のPALTAC様の新物流センター(RDC新潟)において、形状不定な混載段ボールを自動認識して荷降ろしする知能デパレタイズロボット4台を稼働させました。
PALTAC様 RDC新潟で稼働する知能デパレタイズロボット
さらに2019年11月には、PALTAC様RDC埼玉において、配送先ごとに異なるパレットやかご車へ高効率・高安定性で段ボールを積み付ける知能パレタイズロボット8台の本格稼働に成功しました。
PALTAC様 RDC埼玉で稼働する知能パレタイズロボット
創業者の長期ビジョンを守るMBOと75億円の財務施策
重厚長大なロボット産業で世界を変えるには、四半期の短期利益に左右されない長期的な研究開発と経営の安定が不可欠です。 2019年2月、UTEC様のご理解と支援を受け、創業者の滝野とRosenが株式を買い戻すMBO(マネジメント・バイアウト)を実施。同時に総額75億円の成長資金を確保し、経営陣による強固な独立経営基盤を確立しました。
ファーストリテイリング(ユニクロ)とのグローバル戦略提携
2019年11月、ユニクロを展開する株式会社ファーストリテイリング様と、世界中のサプライチェーン自動化に向けた戦略的グローバルパートナーシップの締結を発表。従来は袋入りアパレルの柔らかく不定形な性質ゆえに完全自動化が不可能とされていたピッキング工程を、Mujinの3Dビジョンと独自ハンド技術で突破しました。
ファーストリテイリング様と推進するグローバル自動化プロジェクト
この時期、日本オープンイノベーション大賞 内閣総理大臣賞、日本機械学会賞、十大新製品賞など、1年半の間に怒涛の7大アワードを受賞。社員数も100名を超え、江東区辰巳の現本社(ロボットイノベーションセンター・ジム併設)へと移転しました。
🚀 「技術の会社」から「現場で真に価値を生み出すソリューションプロバイダー」へ
机2台とラップトップ2台の小さなガレージから始まったMujin。 幾度もの資金難や「不可能だ」という世間の常識に抗い、泥臭く現場で実機を動かし続けた結果、今や世界の物流とものづくりを根底から支える存在へと進化を遂げました。
ロボットの知能化によって過酷な労働から人間を解放し、人々がより豊かでクリエイティブな活動に情熱を傾けられる社会へ。 Mujinの挑戦は、まだ始まったばかりです。
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